5Gとは、「第5世代移動通信システム(5th Generation)」の略称で、携帯電話などの通信における次世代通信規格のことだ。すでに海外では商用利用が始まっており、日本でも2020年からサービス開始が予定されている。5Gの大きな特徴は、「通信速度の高速化」「多数同時接続」「高信頼・低遅延」。まず通信速度の高速化だが、4Gよりも最高速度が100倍になるとも言われ、4K/8Kといった高精細映像の送受信が可能になると言われている。次に「多数同時接続」としては接続機器は4Gに比べて100倍にも及び、IoT時代を支える重要なインフラとなる。そして高信頼・低遅延では、通信における遅延が短縮され、リアルタイムに近い通信が可能になり、自動運転やVR 、ARなどでの分野での活用が期待されている。つまり5Gは、IoTやAI、さらにはARやVRなど、これまでもアイデアはありつつも、データが大きすぎて本格的に導入することができなかったようなテクノロジーを、実現することができるインフラなのである。5G対応のスマートフォンについて、アメリカや韓国では2019年4月から、中国は2019年11月から開始したばかりだが、各国が競って5Gの普及に乗り出している状況だ。

それでは5Gによって小売業界はどのような進化が期待されているだろうか。5Gの普及による買い物の変化について、政府は様々なことを予想している。例えば、「自動追尾カートの登場」や「自宅の冷蔵庫の状況を店舗でも確認できる」、「そのまま店を出るだけでお会計が済んでしまう」など、各種センサーとAIによるパーソナライズ化とオートメーション化が進んだ世界だ。

※総務省の2018年「5G利活用セミナー」資料より引用

「そのまま店を出るだけでお会計が済んでしまう」というのは、すでにAmazon GOなどで試されている仕組みだ。日本でもキャッシュレス化が進んできているが、Amazon Goでは店舗を出るだけで自動的に会計が行われるため、スマートフォンをかざす必要すらないのだ。

実店舗において様々な顧客の行動データを集めることもより行いやすくなるだろう。現在、大手ジーンズメーカーのリーバイスは、米国本社に併設している旗艦店で、IoTを活用して商品の動きのデータを集めている。店舗の在庫商品にRFIDタグを取り付け、商品の動きを追跡、分析できるようにしたのだ。どのような商品が手に取られ、試着され、最終的に購入されたのか、リアルタイムでわかることでより良い購買体験につなげる試みなのである。実店舗での行動データの取得は費用対効果の不安もあり、挫折した企業も多い。こうした施策も5Gによってより行いやすくなるだろう。


さらに5Gによって、期待されているのがプロモーション領域だ。動画でもリアルタイムでも遅延なく投影できるので、動画やVR/ARなどの活用、さらにはライブなどによるよりリッチなプロモーションが期待できるのである。株式会社サイバーエージェントによると、2018年には1,800億円ほどだった動画広告市場が、2020年には2,900億円にまで成長し、2024年には5,000億円弱に達するという見込みだと発表した。

上記の例はほんの一部でしかない。5Gによって、データ通信がネックとなり実現していなかった多くのテクノロジー活用が実現できるようになることは間違いない。「顧客が求めるものを、求めるタイミングで提供する」という小売が追い求める理想に一歩近づけることになるだろう。

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