ビッグデータとは

ビッグデータは、直訳すると「巨大なデータ」となる。残念ながら共通定義はまだ定まってはいないが、「一般的なシステムでは、記録や保管、解析などが難しいほど大容量かつ多様なデータ」だと言えるだろう。また、その特性として、データ量(Volume)、データの更新頻度(Velocity)、データの種類(Variety)によって表されるとも言われる。(その後、ビッグデータには先の3つでは不十分で、正確さ(Veracity)、変動性(Variability)、可視化(Visualization)、価値(Value)も必要だとも主張されている。)
IDCの報告書によると、世界のデータ量は、2013年には4.4ZB(ゼタバイト)、2017年は23ZB、そして2025年には175ZBに達する見通しとのことだ。1ZBは、1兆GB(ギガバイト)に相当することを考えると、途方もない量のデータが生成されるのだ。こうしたデータ量の増加の背景にはインターネットの発達やデータ処理技術の発展などがある。例えば、IoT(モノのインターネット化)だが、今後様々なモノがインターネットにつながることで、今まで取れなかったデータが記録されていくのだ。こうした状況が今後さらに当たり前になっていくと予想されるため、ビッグデータの活用は企業にとって避けられない課題となるだろう。ファーストリテイリング が情報製造小売業への転換を宣言しているように、あらゆる企業が、情報(データ)活用へと向かっていくのだ。

 こうしたビッグデータ活用に向けて、小売企業はIT企業と手を組み始めている。例えばヤフー・データソリューションを活用した三越伊勢丹の商品開発事例が挙げられる。2019年7月に、三越伊勢丹のECブランド「arm in arm(アームインアーム)」にて、Yahoo! JAPANのビッグデータとAIを活用し、子育て中の小柄な女性向けのロングスカートを開発したと発表した。両社は、「Yahoo!検索」の検索キーワードや「Yahoo!知恵袋」の質問の書き込みといった、ビッグデータを統計化した上で、AI技術により解析し、「arm in arm」のターゲットでもある子育て中の女性の服装に関するトレンドや悩みを抽出したのだ。そしてその結果、着こなしや自転車の利用、抱っこひもとの合わせ方、静電気などに悩んでいるという子育て中の女性のインサイトを得たという。三越伊勢丹は、得られたインサイトをもとに、子育て中の女性との座談会を行い、仮説の検証を進め、ロングスカートの開発につなげた。9月25日から販売したところ、過去一番売り上げたスカートに比べて初週の販売数が約2.6倍だったという。

この事例のポイントは、「自社だけでなく、プラットフォーマーを巻き込んだこと」と「データはあくまで考えるきっかけに過ぎず、考察が必要であること」ではないだろうか。あらゆる企業が持つ情報の多くが、構造化されていない、つまりそのままでは分析できないデータである。もちろん自社のデータを整理し、分析することも重要なのだが、大体の企業にはビッグデータを扱える環境も人材もいないことが多い。そのため、こうしたIT企業(特にプラットフォーマー)と手を組むことで、迅速で適切な動きができるだろう。また、ビッグデータはあくまでデータであり、そこから何を生み出すかは人間でしかなし得ない。特に今回のような商品開発ではなおさらだ。ビッグデータやAIというと魔法の杖のように錯覚するが、結局は活かすも殺すも人次第なのだ。

※子育て中の小柄な女性向けのロングスカートを開発