デジタルマーケティングの基本Q&A

Q1. そもそもデジタルマーケティングって何?

「マーケティング」とは、端的に言えば「消費者の欲求を見つけ、掘り起こし、それを満たすこと」であり、そのために企業が行うあらゆる取り組みや施策のことを指します。例えば、ある商品やサービスを、それを必要としている消費者と引き合わせることもマーケティングですし、現時点ではその商品を欲しいと思っていない消費者を刺激し、欲しいと思わせることもマーケティングです。更に、消費者が心から「欲しい」と感じる商品コンセプトを紡ぎ出すことや、消費者が買いたいものをストレスなくスムーズに入手できるような仕組みを構築することもマーケティングの一部になるのです。この考え方はデジタルマーケティングにおいても変わりません。では、何がデジタルマーケティングをデジタルマーケティングたらしめているのでしょうか。それは「データ」の存在です。もちろん、これまでのマーケティング活動でも、消費者アンケートやテレビの視聴率といったデータは存在していました。しかし、インターネットとテクノロジーの進化に伴って、企業が消費者から得られる情報はWEBサイトの閲覧履歴や購買データなど、もっと消費者一個人に紐づいた詳細なものとなってきています。それらのデータを活かして、より高精度なマーケティング活動に結びつけることこそがデジタルマーケティングなのです。

Q2. 何故導入を急ぐ必要があるの?

上述した通り、デジタルマーケティングのキモは顧客データです。特に最新のデジタルマーケティングでは、顧客の属性データだけではなく、閲覧履歴や購買履歴といった行動データを基にした施策が成果を大きく分けることになります。そのような精度の高いマーケティング活動を支えるデータを入手するには、その基盤の整備も含めて時間もコストもかかります。そして実際にデータを入手・分析し、それを実際の施策に落とし込んで実行し、成果をあげられるようになるにはそれなりの経験値が必要となってきます。つまり、一朝一夕に事は運ばないのです。一方で、先んじでデジタルマーケティングに対して先行投資をし、その基盤を固めている企業も存在します。そのような企業が提供する顧客のインサイトを突いた商品や快適な購買環境に慣れた消費者は、「そうではない」商品やサービスにやがて振り向いてはくれなくなります。今後、さらなるテクノロジーやIoTの進化によってその傾向はますます強まっていくでしょう。その時に、デジタルテクノロジーの基盤がない企業は淘汰されてしまうのです。

Q3. デジタルマーケティングとWebマーケティングってどこが違うの?

よくデジタルマーケティングと混同されがちな言葉に「Webマーケティング」があります。どちらもインターネットが深く関係しているため、これらを同じものと考えている方がいるのも仕方がないことなのかも知れません。しかし両者は扱う範囲が全く違います。デジタルマーケティングの方がより広範囲の出来事を扱うものであり、Webマーケティングは、デジタルマーケティングのごく一部を指したものです。もう少し具体的に説明すると、Webマーケティングはその名の通り、オウンドメディアやECサイトなどWebサイト上におけるマーケティング活動のことであり、いかにしてそのサイトに消費者を呼び込み、誘導し、最終的にはコンバージョンに繋げるかを考えることに特化しています。Webマーケティングの手法としては、SEO対策やリスティング広告、GoogleAnalytics等を使ってのアクセス解析など、皆さんにも耳馴染みのあるものが挙げられます。一方で、デジタルマーケティングで扱うのはWebサイト上のデータ限らず、例えばSNSのアカウント情報、リアル店舗で得られる顧客の会員情報、ポイント情報、購買履歴、更にはGPSの位置データなど、デジタルで得られる範囲のあらゆるものになります。これらのデータを活用することで、これまで分断されていたオンライン上での消費者の行動と、リアル店舗などオフライン上での消費者の行動を結びつけ、いわゆる「オムニチャネル戦略」を描くことも可能になるのです。言い換えれば、デジタルマーケティングは、これからのビジネスに欠かせないオムニチャネルを実現させるための必須項目でもあるわけです。

Q4. まず何から始めればいいの?

世の中にはMAやCRMなど、デジタルマーケティングに特化した様々なサービスやツールが溢れています。デジタルマーケティングに着手するというと、どうしてもそれらを導入しなくてはと焦ってしまいがちです。さらによくないのは、ツールを導入しただけでデジタルマーケティングを実践している気になってしまうことです。これらのマーケティングツールを本当に効果的に活用するためには、現状を分析し、最適な施策の方向性を導き出すためのデータがなくては始まりません。まず整えるべきなのは自社で活用できるデータベースの整備なのです。すでに自社の顧客データを持っているという企業でも、それらのデータは実は店舗ごとにバラバラに管理されていたり、ECサイトとリアル店舗では別々に管理されている場合があります。それらを統合し、一元管理できる基盤を整えなくてはこれからの時代に即したデジタルマーケティングの実践は望めません。そして、それと同時に考えなくてはいけないのが、膨大なデータを分析し、精度の高い「仮説」を立てることができる人材の確保です。データは集めただけではただの数値でしかありません。その数字を様々な切り口から俯瞰して眺め、売上につなげる「傾向」が読める人材がいて、初めてデジタルマーケティングの施策に落としこめるようになるのです。これは、ある程度の知識と経験が必要になってきますし、業種や業態によって顧客の傾向も当然変わります。いわゆるデータサイエンティストと呼ばれる人材の需要が増している理由もここにあります。社外から採用するにしても社内でそのような人材を育成するにしても、それなりのコストと時間がかかります。そのような、データを活かすための基盤が出来て初めて本格的なデジタルマーケティングに着手できるのです。

Q5. デジタルマーケティングの分析って何をすればいいの?

デジタルマーケティングの分析には、大きく分けて2つの分析が存在します。一つ目は、様々な施策を決めるための現状分析。もう一つは、実行した施策の効果測定分析です。どちらの分析も最終的な目的は同じで、より有効な施策を講じ、売上につなげること。Q4でも触れましたが、分析の本質は、単に数字をまとめるだけではなく、そこから特筆すべき「傾向」を読み取り、それに基づいて有効な施策への橋渡しとなる「仮説」を立てることにあります。現状分析であれば、自社の現状の顧客の属性(年齢・性別・居住地など)はもちろん、どのチャネルで自社の商品に触れているのか、どのようなコンテンツにいつ接しているのかなど、見るべき部分はいくらでもあります。そしてこれから打つ施策が、既存顧客に対してなのか、それとも新規顧客獲得のためなのかによっても、データを見るポイントは変わるでしょう。効果測定であれば、何かしらの施策を実行する際には必ず実行前に定めた定量的なKPI(集客数や問い合わせ数、資料ダウンロード数などなど)が存在するべきですので、それを達成できたかどうかを中心に見ることになりますが、達成できた・できなかったよりも大切なのは、「なぜできた・できなかったのか」の仮説を立てること、それ以外に特筆すべきことを測定数値から読み取ることです。デジタルマーケティングにおいては、旧来のマーケティングと違って顧客の実際の行動データを参照することができるため、うまく分析結果を活用できればより高いパフォーマンスに繋げることが可能ですし、自社内にデータベースを完備しておけば即時性も高いため、実施している施策に対してデイトレーダーのように素早く細かいチューニングを行って最適化することも可能です。

Q6. プロモーションの部分をもう少し詳しく教えて

デジタルマーケティングのプロモーションにおいて基本となるのは、アドネットワークを使ったバナー広告や、Webメディアで実施する記事広告などのネイティブアド、SNS上で配信する動画コンテンツ等、オンラインで完結する施策です。これらは、目的に応じて、オンライン上におけるターゲットの行動データから最適な配信フォーマット(記事なのか、動画なのか、バナーなのか)やKPIを設定しやすく、また効果測定分析結果に基づいてチューニングがしやすいのが特徴であり、すなわちデジタルマーケティングの利点です。プロモーションで、どのようなコミュニケーションを設計すべきなのかは、デジタルマーケティング以前からある「マーケティングファネル(認知・興味関心・比較検討・購買)」に当てはめて考えるのが、とりあえずは分かりやすくシンプルと言えます。例えば、新商品のプロモーションであれば、動画コンテンツでその商品があるライフスタイルの世界観を動画コンテンツで表現し、認知から興味関心までを担わせ、同時に記事型のネイティブアドで理解を促進することで検討まで持っていき、自社サイトを訪れた消費者や商品を検索した消費者にはリターゲティング広告でバナーを常に表示し購買を促す、といった感じです。しかしながら、テクノロジーの進化と共に、消費者一個人の行動に合わせて、もっと複雑で細かなプロモーションが打てるようになってきているのと、オンライン上の行動データだけでなく、リアル店舗を訪れた際の行動データや、サードパーティが持つ自社以外の接点でのデータを掛け合わせて活用することで、オンライン上のプロモーションに限らず、リアル店舗でのオフライン施策や、消費者の動線上にあるOOHを使った施策に繋げる、といったこともデジタルマーケティングの範疇となってきているのです。

Q7. 小売業におけるデジタルマーケティングの事例は?

デジタルマーケティングは扱う範疇がかなり広いため、小売業における事例も枚挙にいとまがありません。その中でも、特筆すべきなのは「Amazon」におけるデジタルマーケティングと言えます。ご存知の通り、Amazonは今やECサイトでの売上が18兆円を超える巨大な小売企業であり、ここ10年でその売上を12倍以上伸ばしています。さらにはECサイトというオンラインでの成果のみならず、Amazon Goというリアル店舗や、Amazon DashというIoT、Amazon Primeという顧客体験を劇的に向上させる会員制度など、オンラインオフライン問わず様々な施策を次々と展開し、ことごとく成果を上げています。その最大の要因は、Amazonが徹底的な顧客起点のデジタルマーケティングを推進してきたことに他なりません。国内においては、「情報型製造小売業(デジタルコンシューマーリテールカンパニー)」を掲げるファーストリテイリングがデジタルマーケティングをフル活用する企業として挙げられるでしょう。同社が展開する「有明プロジェクト」はデジタルマーケティングの集大成とも言えるほど大規模なものであり、その施策はオンライン、オフライン、さらには物流にまで及びます。ECが好調な同社はECにおける顧客の動向を的確に掴むことで商品開発のサイクルを高速化し、顧客の要求により的確に応える狙いがあるのです。その投資コストは莫大なものであり、施策すべてを簡単に真似することはできませんが、このプロジェクトの根底にあるコンセプトについては、あらゆる小売業にとってデジタルマーケティングのお手本となるのではないでしょうか。

Q8. デジタルマーケティングは自社で行うべき?外部の会社に任せるべき?

これはデジタルマーケティングのどの部分を指すかや、企業のリソース状況などによって様々なケースが考えられるため「これが正解」という答えはありません。しかし、確実に言えるのはマーケティングの全てを外部の会社に丸投げすることだけは避けたほうが良いということです。少なくとも、課題を的確に捉え、自社にとって本当に必要なもの(施策にしてもツールにしても)を見極められる人材が、社内でマーケティングの核となる設計図を描き、それに基づいてディレクションをする必要があるでしょう。マーケティングの本質を理解しないまま担当者が全てを外部に丸投げしてしまうと、明らかにオーバースペックなツールを導入することになったり、単に事実を羅列しただけのレポートをもらうためだけに高いコストを支払うことになったりした挙句、全く芯を食わない施策を打ち続けるといったことになるリスクがあるのです。これからデジタルマーケティングに本腰を入れるという状況では、そのような人材を確保することが最初の課題となります。専門家が社内にいない場合は、社外から採用するか、少なくとも常駐してくれる委託先を見つけるなどする必要があるでしょう。同時に、そのような人材を育成できる体制も考えなくてはいけません。マーケティングの核を担える人間が社内で確保さえできれば、プロモーションにおけるクリエイティブやコンテンツ制作など、それぞれの専門領域は外部のパートナーに任せたとしても、一気通貫したブレないデジタルマーケティングを実践することも可能となります。